モンスターメーカー・オンラインTRPG特設 / クエスト001 洞窟探検・中編
TOPへ戻る

200806292340

クエスト001 洞窟探検・中編

柴崎@銀河企画


ウルチ、リンク、ルフィーア、ロリエーンの4人は、
食材探しのため「ブルガンディ島・東の洞窟」に入り、
遭遇したモンスターをやっつけながら進んでいき、
洞窟の奥にある大きな扉の前に出た。


クエスト 洞窟探検・中編

【竜の扉】
ルフィーア、ロリエーン、ウルチ、リンクの一行が着いた場所は、
竜の紋章が付いた大きな扉の前だった。
銘板に刻印された模様を調べると、それは竜と人が会話をしている姿だった。
カギ穴から中の様子を探ると、大広間になっていて、
そこには竜が体をまるめて眠っているようだ。
冒険者たちは警戒しつつも、途中で見つけた鍵を使ってその扉を開いた。

【大広間】
中を覗きこむと、そこには竜が身体をまるめて横になっていた。
しかし、竜に敵意は感じられず、自分から動く意思も無さそうだ。
広間の対角線側には、同じような扉が付いていた。
部屋の隅には、テーブルや椅子が雑然と置かれている。
他には、特別に注意が向くようなものは無かった。
冒険者たちは、広間のすべてが弓矢や魔法の届く範囲だと認識した。

【君を待つ竜】
竜はゆっくりと眼を開け、冒険者に向けて話を始めた。
「私の名はバルサレウス。
 ようこそ、そこにいる者よ。入ってきても良いぞ」
冒険者たちは広間に入って、それぞれに挨拶をした。
バルサレウスは続けた。
「竜が話をするのは、別に奇妙なことではない。
 特に、“心の絆”で結ばれた友とは、心で会話ができる。
 私は、心の絆を継ぐ者が現れるのを、ここで待っていたのだ」
冒険者たちは、持っていた武器を収めて話に聞き入った。

【心の絆】
リンクは、バルサレウスに食べ物の好みをたずねた。
すると、バルサレウスは答えた。
「ピタヤ* が好物なのだが、あるかい?」
(*pitaya 南方原産のサボテンの実。キウィのように細かい種がある。
 生で食べられる。大陸でも温暖なところでは栽培され流通している)
それを聞いてリンクは、持ってきた食材からピタヤを取り出して調理を始めた。
バルサレウスは話を続けた。
「心の絆は、離れていても1対1で意識を伝えられる特別な力だ。
 言葉だけではなく五感すべてを伝えることもできる。
 卵から孵ったヒナは、最初に見た生物を“親”だと考える。
 われわれドラゴン族の場合は、
 そのヒナと“親”との間に信頼関係が形成されたとき、
 信頼の証として心の絆の能力が備わるのだ。
 この特別な力は、“親”が竜でない場合にも現れる。
 その能力を持つ者をヒューマンは“ドラゴンライダー” と呼んでいる。
 私の記憶では、エルフ族にも竜と心の絆を持った者がいた。
 なお、竜にも♂と♀が居るが、
 竜以外の生物が竜を見てそれを区別するのは難しい」

【お茶会】
リンクは、バルサレウスの話を聞きながら、
ピタヤの乗ったケーキとお茶を用意した。
ロリエーンは、話ついでにエルフ族が長寿なことを自慢した。
バルサレウスは、さらに話を続けた。
「ピタヤを食べるのは久しぶりだ。ありがとう。
 この炎のような色を見ると元気が出るよ。
 ところで竜は、成体になってしまうと老いも若きも区別しにくい。
 静かに暮らす竜はエルフに負けず劣らず長寿だよ。
 寿命を奪うのは戦争だ。
 心の絆で結ばれた私の友は、悲しいことに先の大戦で死んだ。
 実は諸君に託したいものがある」
バルサレウスが心情を話しているそのとき、
広間にあるもう一つの扉の外から
「ヴォラー!」という、どすの利いた低い叫び声が響いた。

【招かざる客】
お茶会が始まったばかりなのに、扉を叩く音が激しさを増した。
冒険者たちが呼びかける声は、外には届いていなかった。
ルフィーアは、防御のため扉のすぐ内側にファイアウォール*を立てた。
(* ここでは、魔法の火でできた壁を意味する)
扉が、いきなり破城鎚** で打ち破られた。
(** ここで使われたものは、木製で乗用車ほどの底面積があり、
 車輪はあるが手押し式で、中央に柱が組まれていて、
 巨大な鉄心付きの棒がブランコのように打ち出される)
そこへ最初に入ってきたのはオーク軍の士官だった。
何か大根役者のような口調で、こう言った。
「遂に見つけたぞ、お尋ね者のドラゴンめ。
 おや? 脇に居るのは冒険者か。では、黙って聞いておれ。
 俺さまは隊長のグラエフだ。
 バルサレウスよ、わがオーク軍は貴様を討伐にやってきた」
ロリエーンは、制止を無視して入ってきたグラエフめがけて眠りの矢を放った。
矢はグラエフの尻に当たり、いびきをかいて熟睡を始めた。
破城鎚の一撃で壊れた扉は、ファイアウォールに倒れかかり、散らばって燃えていた。
そこへ、副官グリモワを先頭に残りのオーク兵たちが入ってきた。

【交渉】
ウルチは、援軍を呼ぶため「闇のクーポン券」の半券部分をもぎって掲げた。
リンクは、防御力と攻撃力が上がる魔法をそっと冒険者たちに唱えた。
グラエフは矢が刺さったのとは反対側の尻を槍兵に突かれて目を覚ました。
「ぶひっ?(俺は何で寝ていたんだろ)
 このドラゴンは前の戦役で多くの仲間の命を奪った宿敵だ。…だじゃれではないぞ。
 こいつと組んでいたドラゴンライダーは交戦中に我々の手で倒した。
 だが当のドラゴンを倒さない限り魂の怒りは鎮まらないのだ。
 我々が諸君と敵対する理由は今のところ無い。
 だから、一緒にドラゴンを退治するというのなら、戦利品と栄誉を分かち合おう。
 悪くない話だろ?」
バルサレウスは、談合を静観している。

【オーク軍】
広間に入ってきたオーク軍は総勢20名に達した。
リンクは、オーク軍とバルサレウスとの間に、バリケードのようにテーブルを並べ、
そこに菓子と飲物を置いた。
バルサレウスは、苦笑している。
グラエフ「槍兵は前へ、弓兵は包囲隊形をとれ。
 ただし指示があるまで攻撃をするなよ」
そこへ、闇のクーポンで派遣されたドローネが駆けつけた。
ドローネは通常装備のほかに魔剣と地酒を持っていた。
ルフィーアは菓子をつまみ食いして魔力を補給した。
それを見てオーク槍兵も飲食を始めた。
すると、槍兵の一人がバルサレウスの妙な様子に気付き、大声で叫んだ。
「隊長、こいつは卵を抱えています!」

【闘う理由】
ロリエーンとリンクは、グラエフに竜の討伐をやめるよう説得した。
グラエフ「冒険者の言には一理あるが… 副官どうなのだ?」
グリモワは、こんなことをいちいち言うのも面倒だという顔をしながら、
隊長のグラエフに分かりやすく説明した。
「ブルガンディ島には諸国が批准した中立条約があります。
 しかしドラゴンは無国籍のため法の保護対象ではありません。
 そして我々には遺族の無念を晴らすという大義があります。
 条約に違反しているのは我々を先に威嚇攻撃した冒険者のほうです」
雲行きが怪しくなるのを感じて、
ウルチはドローネにバルサレウスを守るよう依頼した。
ルフィーアは戦端を開く同意を仲間に求めた。
膠着状態のなか、バルサレウスが冒険者に言った。
「この卵の育ての親になってほしい…」

【作戦続行】
オークと冒険者は、それぞれに言い分を伝え合ったが、
オーク側はグリモワのごり押しで作戦続行が決まった。
グラエフ「諸君らの言う通り、卵に罪はない。
 部隊はドラゴンに的を絞れ。
 ただし冒険者から攻撃された場合は反撃せよ」
そう言うとグラエフは、兵士に攻撃開始の合図をした。
バルサレウスの外皮に槍が突き立てられた。
槍兵「隊長、このドラゴンの鱗は、槍では刺し通せません」
ここでグリモワは隊長にいくつかの助言をした。
グラエフ「では、破城鎚を広間に入れろ。
 あれならドラゴンの鱗を粉砕できるはずだ。
 炎を吐きそうになったら、投擲兵は準備した氷塊を口に叩きこむのだ」
ルフィーアは、攻撃力倍増の「ゴブルの香辛料*」を一気呑みして顔を真っ赤にした。
(* タバスコのような液体で瓶に入っている)
冒険者たちは、すべての卵を1つずつ受け取って保護してから、
それぞれ攻撃の構えと魔法の詠唱を始めた。
こうして、全く予期していなかった冒険者とオーク軍の遭遇戦が始まった。


続きは→ クエスト001 洞窟探検・後編